2022/09/01
本学へ留学したウクライナ研究者からの感謝のメッセージ(Dmytro cFedorynenko 准教授)
2022年2月のロシア軍によるウクライナ侵攻に始まった戦争を受け、東北大学では3月に「ウクライナ人道支援基金」を立ち上げ、本学に在籍するウクライナ国籍の研究者や留学生、またそのご家族への支援の取組を開始しました。
ここでは、実際にご家族を日本へと避難させることのできた研究者、サポートに尽力した職員の声、そしてご寄附を頂いた支援者の声をお届けします。
工学研究科 航空宇宙工学科教授
70代の両親が故郷のチェルヒフからの避難を決めたのは3月中旬のことでした。生まれ育った故郷を破壊される気持ちは本当に言葉に言い表せられません。まずはキーウヘ、親戚とともに車での避難を試みました。通常なら2時間程度の道のりですが、ロシア軍が道路を砲撃し始めたため畑の中を走らざるを得ず、何とかキーウに逃げ込むまで5時間を要しました。両親とは携帯電話で連絡を取っていましたが、ロシア軍は電話を傍受しているとも聞いたため、安全な地域にいる時だけしか連絡の取れない状況でした。
その後、ウクライナ政府による避難列車で両親は国境近くまで移動することができ、ポーランドの親戚のもとへ向かいました。その2日後にはチェルニヒフに架かる最後の橋が破壊され、残された人たちはみな閉じ込められてしまったと聞きます。
私は更に日本への避難を提案しましたが、両親は一刻も早く故郷に帰りたい、ポーランドにいる方が故郷に近いと最初は難色を示していました。彼らの年代を考えれば当然の気持だと思います。しかし戦況が長引き、帰れるのはまだまだ先かもしれないという現実が分かってきたのでしょう。東北大学が日本までの旅費を全額負担し、また大学の寮を住まいとして提供してくれることを伝えると、両親は日本への避難を受け入れてくれました。
日本行きを決めたものの、父はパスポートを持っていなかったため、来日までは一苦労でした。ポーランドの日本大使館で渡航証明書とビザの申請が必要でしたが、そのためにはまずウクライナ領事館で別途証明証を発行する必要がありました。手続きでは宮匹さん(国際サポート課長)が日本大使館に何度もメールを書いてくれました。
両親が日本へ到着したのは4月30日。空港で両親を見た瞬間は本当にうれしくて、心からほっとしたのをよく覚えています。両栽は現在、大学のユニバーシティハウスに住んでいます。日本語も英語も話せませんのでコミュニケーションは大変ですが、私の妻や娘もサポートしながら、毎日散歩をしたり料理をしたりと、普通の生活を送ろうとしています。
在留カードを取得しましたが、在留期間は1年です。両親は戦争が終わったらすぐにでも帰国したいと思っているようですが、それがいつになるかはわかりません。今はただ、両親が無事であること、そして宮元さんや東北大学の皆さんに心から感謝するばかりです。
e-voiceより転載(2022.07.25)
専門は工作機械用スピンドルを中心とした精密工学
何度も打合せを重ねた二人。東北大学では今後ウクライナ留学生の受け入れも予定している。
国際サポートセンター(総務企画部国際サポート課長)
東北大学国際サポートセンターでは、フェドリネンコ先生のご両親を受入れるため、ビザ取得支援の他、渡日前PCR検査・フライト・宿舎等の手配を行いました。今回の避難民としての受入れについては、関係省庁、自治体、旅行代理店等に問合わせても明確な回答はなく、手続きやプロセス全てが手探りでした。また、高齢のご両親にとって、水際対策による複雑な空港検疫等も大きな不安でした。多くの課題がありましたが、最終的に無事避難され、フェドリネンコ先生から、成田空港でご両親と再会できたとの電話を受けた時は、「今日は美味いビールが飲める。」と安堵したことを覚えています。
一方で、本稿執筆時点でウクライナの情勢は好転する兆しが見えず、ご両親の避難生活は当面続くかもしれません。また、ウクライナにおいて学業や研究の継続が困難になった方々の受入れも進めております。8月には日本文学の研究者を受入れました。この秋には数名の学生が来日し、安心•安全な環境で勉学に取り組んでいただける予定です。
これらの支援には、ウクライナ支援基金を活用しており、避難民の方々は、この基金によって希望を持ち続けることができています。ご寄付いただきました皆様方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
引き続き、多くのみなさまのご理解とご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。
<募金の方法等に関するお問合せ先>
東北大学基金事務局
(東北大学総務企画部基金・校友事業室内)
TEL: 022-217-5058・5905
E-mail:kikin*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
<募金以外でのご支援に関するお問合せ先>
東北大学萩友会事務局
(東北大学総務企画部基金・校友事業室内)
TEL: 022-217-4817・5059
E-mail:alumni*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
<支援を必要とされる方はこちらまで>
国際サポートセンター
(東北大学総務企画部国際サポート課)
TEL: 022-217-6021
E-mail:supportoffice-r*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)